美容室でろう者と美容師のコミュニケーションを助けるアプリを作っています
美容学校に通っていた頃から、ろう者の方が美容室で使いやすいアプリを作れないかと考えてきました。
美容室では、髪の長さ、カラー、前髪、パーマ、仕上がりの雰囲気など、細かい希望を伝える場面がたくさんあります。
紙に書いたり、写真を見せたりする方法もあります。実際に、美容室でろう者の方に向けた説明用の紙が使われることもあると聞いたことがあります。
ただ、紙だけでは伝えきれないこともあります。
「今、少し痛いです」「もう少し短くしたいです」「この色は少し不安です」など、その場で出てくる気持ちや確認したいこともあるからです。
それなら、スマホの画面をタップするだけで、もっと細かく伝えられる仕組みを作れないだろうか。
そう考えて、現在、美容室でのコミュニケーションを助けるアプリを開発しています。

手話と美容とITを組み合わせたい
私は美容師資格を持っていて、Web開発の経験もあります。そして今は、手話を勉強しています。
その3つが重なったときに、「手話と美容とITを組み合わせれば、自分にできることがあるかもしれない」と感じました。
もちろん、手話だけですべてを解決しようとしているわけではありません。
美容室では、手話ができる美容師さんばかりではありません。ろう者の方も、いつも同じ方法で伝えたいとは限りません。
だからこそ、画面をタップする、文字で見せる、必要なときは音声で読み上げる。そうした複数の方法を用意して、少しでも伝えやすく、確認しやすい形を目指しています。


事前に希望を準備できるようにする
美容室に行ってから、その場で全部を決めるのは大変です。
どのくらい切りたいのか。カラーをするのか。パーマをするのか。前髪はどうするのか。
聞こえる人でも、言葉だけで細かい希望を伝えるのは難しいことがあります。ろう者の方にとっては、さらに確認することが増えるかもしれません。
そこで、アプリでは事前に希望を準備できるようにします。
たとえば、カットなら「3cmくらい切りたい」「肩までの長さにしたい」などを選んでおき、美容室で美容師さんに見せられるようにします。
その場で変更できることも大切です。実際に髪を見てもらってから、「やっぱり少し短くしたい」「今日はカラーだけにしたい」と思うこともあります。
事前に準備できる安心感と、その場で変えられる柔軟さ。どちらも大切にしたいところです。


施術中に我慢しなくていい画面
美容室では、施術が始まってから伝えたいこともあります。
シャンプーのお湯が熱い。カラーやパーマがしみる。少し待ってほしい。いったん止めてほしい。
こうしたことは、すぐに伝えられる方が安心です。
そこで、施術中に使う画面では、押しやすい大きなボタンを用意しています。ボタンを押すと、日本語の文章として表示され、必要に応じて音声でも伝えられるようにします。
「我慢しなくていい」ということは、美容室で安心して過ごすためにとても大切です。
小さな不安をそのままにしない。困ったときにすぐ伝えられる。そういう画面を目指しています。


美容師さんからの質問も確認しやすくしたい
コミュニケーションは、お客さんから美容師さんに伝えるだけではありません。
美容師さんからも、「ここはどうしますか」「この長さで大丈夫ですか」「カラーはこの色でいいですか」と確認したい場面があります。
そのときに、音声だけでは分かりにくいことがあります。
アプリでは、美容師さんが音声入力を使い、話した内容を文字で表示できるようにします。急いでいるときや、細かい確認をしたいときには、手書きで入力できる機能も役立つかもしれません。
文字を大きく見せる、音を鳴らす、振動で知らせるなど、使う人に合わせて調整できることも大切です。


まだ完成品ではなく、開発途中です
このアプリは、まだ完成品ではありません。
画面の内容も、機能も、これから変わっていきます。
実際に使いやすいものにするには、ろう者の方の意見も、美容師さんの意見も必要です。自分だけで考えていると、どうしても気づけない部分があります。
だからこそ、開発しながら、必要な機能や分かりにくい部分を見直していきます。
手話ライフでは、このアプリの開発過程も記録していきます。
うまくいったことだけではなく、迷ったこと、作り直したこと、実際に使う人の声を聞いて変えたことも残していきます。
美容室だけで終わらせず、ネイルやメイクにも広げたい
今は、美容室で使うことを中心に作っています。
将来的には、ネイルやメイクにも広げていきます。
ネイルなら色やデザイン、長さ、形。メイクなら肌の悩み、なりたい印象、苦手な仕上がり。
美容の場面では、細かい希望を伝えることがとても大切です。
聞こえる、聞こえないに関係なく、自分の希望を安心して伝えられること。その結果として、美容をもっと楽しめること。
そのための一つの方法として、このアプリを育てていきます。
まだ開発途中ですが、1日でも早く、ろう者の方が気軽に美容室へ行き、自分の望む施術を受けやすくなる形に近づけていきます。
手話、美容、IT。
この3つをつなげながら、手話ライフらしい取り組みとして、少しずつ進めていきます。